【虚血性腸炎】
虚血性腸炎は血流障害による腸管の炎症の一種です。
下行結腸からS状結腸に限局した可逆性の血流障害のことを、特に「虚血性腸炎」と呼びます。
虚血性腸炎の要因は2つであると言われています。
一つは血管側因子で、動脈硬化や血圧低下などがこれに当たります。
もう一つは腸管側因子で、腸管内圧の高まりや蠕動の亢進がこれにあたります。
発症は中高年の女性に多いとされています。
また虚血性腸炎の症状は、強い左下腹部痛と血便、そして下痢です。
典型的な例はこのような感じです。
「元々、高血圧と高脂血症を治療していた60歳の女性。便秘がちでもあった」
「夕食後から腹痛と下痢が始まり、左のお腹も痛くなってきた」
「明け方になり、血便も起こり始めたため、救急搬送」
医師は問診をした段階で、感染性腸炎などを契機にした虚血性腸炎を疑うわけです。
また虚血性腸炎の発症のきっかけとしては、下剤の内服というのもあります。
虚血性腸炎の診断は、大腸カメラ(内視鏡検査)やCT検査などを行います。
特に大腸カメラ(内視鏡検査)での所見は特徴的です。
虚血性腸炎の治療
重症度と合併症によって異なります。
軽症の場合は、刺激の少ない食事と安静で外来治療を行います。痛みなどが強い場合は入院をして絶食とし、点滴を行います。
まあ軽症でも重症でもまずは、自然治癒を待つことになります。多くは2-4日で症状は消退します。
また非常に炎症が強く狭窄をきたしてしまった際でも、ほとんどの場合は経過とともに狭窄が改善してくることが多く、手術にいたることはまれです。
注意点
虚血性腸炎は感染性腸炎を契機とした二次性の疾患である可能性があるという点です。
前述の2要因のうち、感染性腸炎が腸管側因子になることがあります。
実際、虚血性腸炎の約17%で便の培養検査から病原性の細菌が検出されたとの報告もあります。感染性腸炎には培養検査では陽性になり得ない、ウィルス性のものもあるわけですから、実際にはもっと多数の感染性腸炎患者がまぎれていると考えられます。
感染性腸炎が契機になっていると思われる経過の虚血性腸炎では、他のひとに感染させないように、感染防御などに注意する必要がありそうですね。