【腸管出血性大腸菌(O-157など)】
病原性大腸菌でベロ毒素(または志賀毒素)を産生するタイプのものを指します。
1996年の堺市で起きた、集団食中毒で一躍有名になりました。
大腸粘膜に付着し増殖した腸管出血性大腸菌が、ベロ毒素(志賀毒素)を産生し、その毒素が大腸粘膜を障害することにより、血性の下痢を引き起こします。
腸管出血性大腸菌の感染経路はさまざまです。
ウシは健康な状態でも保菌していることがあるため、生レバーや加熱不十分な牛肉は感染経路になり得ます。
「菌が数個」だけ口から侵入しても感染が成立することもあるほど感染力が強いため、保育所や保養所での集団発生の報告があります。
簡易プールや家畜との接触でも感染の可能性があります。
腸管出血性大腸菌感染症の潜伏期間は4日ー14日と比較的長期間ですが、多くは3日-5日です。感染者の1/3は無症状もしくは極軽微な症状です。
腸管出血性大腸菌感染症の症状
感染者の1/3は無症状もしくは極軽微な症状で終わりますが小児と高齢者は症状が出現しやすいことが知られています。
まずは風邪のような、全身の倦怠感から始まります。24時間以内に、嘔吐や下痢などの消化器症状が出現します。
その後、血性の下痢と右下腹部の激しい痛みが襲います。命にかかわる重篤な合併症である、溶血性尿毒症症候群や脳症を引き起こすこともあります。
診断
確定診断は便を培養し、分離された菌がベロ毒素を産生するタイプであることを証明することによって行います。
下痢が始まってから5日以上経過すると、便からの菌検出の可能性が低くなります。
そのため場合によっては大腸カメラ(内視鏡検査)を行って、便汁を採取することもあります。そして大腸カメラでの所見は特徴的で、確定診断の契機になることもあります。
腸管出血性大腸菌感染症の治療
重要なのは重篤な合併症の予防と、合併症の早期発見です。
基本の治療は他の感染性腸炎の治療と同様で、補液を行い脱水を防止することです。
抗菌薬の使用については、一定の見解が得られていないのが現状ですが、最近は積極的な抗菌薬投与が行われることが多いと思われます。