ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ感染症)

【ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ感染症)】

胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の主な原因です。他にも様々な疾患を引き起こしますが、ここでは割愛します。

今はH.pylori(ピロリ菌)の感染が証明できれば「除菌=薬剤による駆除」か可能です。

 

胃がんの99.4%はH.pylori陽性の患者さん(ピロリ菌のひと)から発生します。

胃がんの発生リスクは除菌を行うと2/3~1/2になることが分かっています。胃がんの撲滅のためには除菌は必須と言えます。

 

また胃潰瘍や十二指腸潰瘍においては、除菌療法は潰瘍再発を強力に抑えます。

さらに潰瘍の治療において除菌療法は、従来の制酸剤の継続投与よりも総医療費を安く抑えることができます。

H.pylori陽性の患者さんは、基本的には除菌療法をすることをお勧めします。

 

除菌療法については注意点がいくつもあります。

挙げればきりがありませんが特に大事なものを挙げるとすれば、下記になります。

①除菌前には内視鏡検査を必ず受けましょう。

②ピロリ菌の感染を証明する検査は1つでは、結果が100%保証ではありません。

③除菌の判定は、除菌後に十分な間隔をあけて行いましょう。

④除菌後も定期的な内視鏡検査は必須です。

 

1つ目の注意点です。

除菌前の内視鏡検査では、現時点で胃がんなどが存在しないことやH.pylori陽性である可能性があるのかを確認します。

除菌は胃がんなどの予防のために行うわけですから、当然の流れです。

また内視鏡検査(胃カメラ)で萎縮性胃炎や胃潰瘍、胃潰瘍の跡などの有無を確認し、H.pylori陽性の可能性がある場合のみ、次の検査を保険診療で行うことができます。

 

2つ目の注意点です。

現行の感染を100%の確立で証明する検査は、現時点では存在しません。

1つの検査でピロリ菌が陰性ならば検査を追加するか、最初から2つの検査をおこなうことがガイドラインでも推奨されています。

一般的に人間ドックなどでは1つの検査しか行わないため、特に要注意です。

また大きくは6つのピロリ菌検査が存在します。

迅速ウレアーゼテスト、組織鏡検法、培養法、尿素呼気試験、抗ピロリ抗体検査、便中ピロリ抗原検査です。

それぞれ特徴が異なり、内服薬や検査の組み合わせには注意が必要です。

 

3つ目の注意点です。

除菌の判定は、十分な間隔をあけて行いましょう。

一般的には除菌後1か月以降におこないますが、1か月後の除菌判定では5%もの偽陰性が報告されています(尿素呼気試験において)。

5%のひとは本当は除菌されていないのに、除菌されたと判定されているということです。

当院で除菌後の判定は2か月以上の間隔をもって行うことにしています。

 

4つ目の注意点です。

除菌療法後は、定期的な内視鏡検査を受けましょう。「ピロリ菌を除菌したのだから、もう胃がんは関係ない」とおっしゃるかたがいます。

これは明らかに間違いです。

1/2~2/3程度にはリスク軽減が可能ですが、除菌後10年以上経ても胃がんが発生することがあります。

さらには、除菌後の胃に発生した早期の胃がんは内視鏡(胃カメラ)でも発見がしばしば困難です。胃透視検査ならば言わずもがなです。

必ず定期的な内視鏡検査(胃カメラ)を受けましょう。

 

ここでは概略のみの記載ですが、H.pylori感染症にはきちんと対応するには的確な内視鏡診断と、H.pyloriに関する専門的な知識が不可欠です。

ピロリ菌感染が心配な方は、ヘリコバクターピロリ感染症専門医に相談しましょう。

 

 

よくある質問に「ピロリ菌は井戸水で感染するんでしょ?」というのがあります。

本当によく耳にするフレーズですね。さすがに感染経路が井戸水かどうかは証明されていません(調べた限りでは)。

しかしピロリ菌感染において環境因子が重要なことは事実のようです。

先進国と発展途上国、上下水道の整備状況、都市部と田舎、人種(白人と黒人)、所得の差などが感染率に関与していることが疫学研究でわかっています。

「ピロリ菌は井戸水で感染」とういのはそれらを日本的にわかりやすく表現しているのかもしれませんね。

近年の先進国での感染経路は家族間の経口感染です。

家庭内でピロリ菌が感染していることも事実として広く知られています。

感染は2歳までに成立することが大半ですので、家族内感染では近親者、なかでも特に母親からの感染というルートが主体なのです。

「母親になる前にH.pyloriを除菌する」というのも選択肢の一つだと考えます。

 

「ピロリ菌」という呼び名ですが、院長が研修医だった時代には「ヘリコ」と医師の間では呼ばれていたようです。

「ピロリ菌」と言われるようになった当初、院長にはその名前に違和感があったようです。

「ピロリ菌」という呼び名が広く普及したきっかけは週刊誌AERAの1994年3月の特集だったとも言われます。タイトルは「僕の名前はピロリ」でした。

その後の数週間、上記記事を追いかけるように大手新聞での報道がなされ、メディアに「ピロリ菌」の呼称が定着していったようです。

そして、今では医師もH.pyloriのことを「ヘリコ」とは呼ばず、「ピロリ菌」と呼びます。

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