仙台消化器内視鏡内科クリニックの大腸ポリープ治療
大腸ポリープ治療で重要なことは3点です。
①ポリープには癌が含まれること
②正確な診断をするには、知識と経験、性能のよいスコープが必要なこと
③種類が多いため、正確な診断に基づいて治療を行う必要があること
ポリープとは「キノコ状に膨れているもの」全般を言います。
「あれ?腫瘍だけではないの?」と思われた方は鋭いですね。
上記が定義ですので、ポリープと言っても様々な種類があるのです。
まずは「上皮性(粘膜由来のもの)」と「非上皮性(粘膜以外を由来とするもの)」
に分けられます。
一般的に内視鏡治療の良い適応になるのは上皮性のポリープです。
上皮性ポリープは「腫瘍性」と「非腫瘍性」に分かれます。
腫瘍性ポリープには「腺腫」や「SSA/P」、「癌」などがあります。
非腫瘍性ポリープには「過形成」や「炎症性」「過誤腫性」などのポリープがあります。
その他、ポリープには多数の種類があります。
大腸ポリープ診療ガイドライン2014には38種類のポリープが列挙されています。
これらの診断には
ポリープの形態や表面性状、色調、硬さ、はもちろんのこと
前述のpit patternも参考に行っていきます。
「これは形態やpit patternからは腺腫だ」
「6mm以下ではあるが、陥凹しているので癌の含まれる頻度が高い」
「では、内視鏡切除を行おう」
上記のように、その場で瞬時に診断を行い、治療につなげる必要があるのです。
「これは10mmしかサイズが無いけれども形態やpit patternからは癌の可能性が高いな」
「しかも深く根を張っている可能性がありそうだ」
「内視鏡的粘膜切除術では不十分な治療になるかもしれない」
「組織検査を行うと、今後の診断や治療に差し障る可能性があるな」
「今日は観察だけにして、高次医療機関に紹介にしよう」
などの適切な判断も、正確な診断に依存します。
大腸ポリープと大腸がん
腺腫のうちに切除をしておけば、「将来の大腸癌を予防できる」可能性が高いのです。
adenoma-carcinoma sequence説というものがあります。
「大腸がんは腺腫を介して発がんする」という説です。
正常粘膜から癌に至るまでに多段階的に遺伝子変異が起こっています。
それぞれ、APC遺伝子は正常粘膜から腺腫、KRAS遺伝子は腺腫のグレードアップ、
p53遺伝子は最終的に腺腫の癌化にそれぞれ関与していると考えられています。(図)
現在では上記のルートが大腸癌への主ルートであることにはおおよその理解が得られています。
実際に腺腫はサイズが大きくなると、内部に癌が含まれる可能性があがることが分かっています。
Gschwantlerらの報告によると5mm未満のサイズで3.4%、5-10mmで13.5%、10mm以上で38.5%のhigh grade dysplasiaがみられたと報告されています。
(Gsschwantler M,Kriwanek S, Langner E,et al.High-grade dysplasia and invasive carcinoma in colorectal adennomas: a multivariate analysis of the impact of adenoma and
patient characteristics. Eur J Gastroenterol Hepatol 2002;14:183-188)
ちなみに日本でいう粘膜内癌(初期の癌)は欧米ではhigh grade dysplasiaとして記載されることが多いです。
ですので、腺腫性ポリープのうちに切除をしておけば大腸癌を予防できる可能性が
高いというわけです。
しかし100%予防というわけではありません。de novo癌と呼ばれるものがあります。
正常粘膜から直接発生する癌のことです。またこの癌は早期に浸潤を始め、悪性度の高いことも特徴と言われています。
実際の進行がんを見て、de novo癌だと診断することは困難なため大腸癌全体に占めるde novo癌の割合は正確には分かっていません。
しかし、現時点では大腸がんの大部分は前述のadenoma-carcinoma sequence説ルートであると考えられています。
やはり、将来の大腸癌に備えて大腸カメラを受けておき、大腸にポリープが発見された際には、適切なタイミングで切除することは重要と言えます。