血便の危険性
原因の話になるのですが、大腸がんが一番初めに考えられます。頻回の出血があった場合には、大腸憩室出血、又は痔の可能性もあります。
感染性腸炎に併発した血便というのもあるので、細菌感染の腸炎で血便が出る可能性もあります。
また、潰瘍性大腸炎の際も血便が併発する可能性もあります。 あとは、上部消化管からの出血の場合は黒色便になりますが、静脈瘤の破裂や動脈性の出血の場合は大量に出血するため、赤い血がドバっと出る場合もあります。
ちなみに大腸憩室出血については、ショック状態になる可能性があるくらい危険です。
大腸憩室出血は、大量の出血が3回4回と何度も出るケースが多いのです。
貧血の症状や、そこから二次的な被害(倒れたり)もあるので、万が一当院で当日検査が出来なければ近くの病院を紹介するほど危険度が高い症状です。
出血量と危険度の関係性
出血量と危険度に相関関係はなく、少量だから大丈夫というわけではありません。
例えば大腸がんの場合は、大量の血便が出るわけではなく少量の出血となる場合が多いのです。
一方で、痔の場合は一気にドバっと出る場合もあり、大腸憩室出血の場合も同じように出血します。
つまり、大腸カメラで腸内を見てみないと分からないことが多いのです。
血便は初期症状として現れるのか
潰瘍性大腸炎なら初期症状として血便が現れます。
一方で大腸がんの場合は初期症状として血便は現れません。
大腸がんで血便が出てる患者さんは、腸管の半分くらいまで癌が大きくなるくらい進んでいる場合が多いです。
大腸がんはある程度大きくなると便通異常をきたすこともあります。
要するにバナナ状の便ではなく、下痢気味になり、そこに加えて血便が出るイメージです。
一見潰瘍性大腸炎のような症状ですが、慢性的に便秘もあり、下痢もあり、血便もあり、高齢者となると、がんを疑うこともあります。
血便と年齢の関係性
血便の原因が何かということは、年齢にも依存します。
潰瘍性大腸炎は20~30代と60代に多く、大腸がんはご高齢の方が多いのです。
放置すると特に危険な血便は
①潰瘍性大腸炎
┗重症であれば命の危険
②大腸がん
③大腸憩室出血
┗出血が止まらずにずっと出っぱなし状態のため、貧血やショックが心配です。
重症度や病気の判断材料
血便の色、回数、量、痛みが判断材料のポイントです。
痛みについては、肛門痛を伴う場合は痔の可能性が高いです。
しかし、「肛門痛もあるため血便の原因は痔だ」と思っていたら実は大腸に癌があった、というようなこともあるため一概には言えません。
一方で、大腸がんの場合は基本痛みはありませんが、腸閉塞を併発すると痛みも出てきます。
腸閉塞を併発すると、腹痛に加え、お腹の張りや嘔吐も出てきます。
患者様によっては、ただの便秘と勘違いして放置してしまうケースもありました。
また、大腸がんが腸管の外側まで進出していた場合、腰に痛みも出てきます。
大腸がんが大きくなり粘膜の外側まで進出してしまい、それが痛みになります。
転移しているわけではないですが、大きくなっている証拠です。
多くの患者様は、「何か具合が悪い」と言いながらいらっしゃって、来院時から大腸がんや腸閉塞を懸念している方はあまりいらっしゃいません。
数年以内に大腸カメラ検査を受けているなら、急に腸閉塞をきたすほどの大腸がんというのは考えづらいです。
しかし、大腸カメラ検査を受けたのが10年以上前という方や、一度も受けたことがないような患者様の場合は、ただの便秘と思っていたら大腸がんだったということもあります。
そのため、定期的に大腸カメラ検査を受けておくと安心だと思います。
ストレスと血便の関係性
ストレスからくる消化器症状と言えば過敏性腸症候群です。
ストレスが原因で(直接的な理由で)血便、というのはあまり考えられません。
しかし、潰瘍性大腸炎の患者に、ストレスがかかると血便が出る(増える)ことはあります。
潰瘍性大腸炎はストレスの影響を受けやすく、仕事が忙しかったり精神的にきつかったりすると血便や下痢の量が増える可能性があります。
また、ストレスで胃潰瘍になって、血便が出る、というのもあります。
胃潰瘍による血便は、黒色便といった黒っぽい便です。
ストレスが直接的な理由で血便が出るということは無いため、「血便だけど、どうせストレス」と言わず、大腸カメラ検査を受けるべきです。
検査における鎮静剤の使用
当院では基本、眠った状態で大腸カメラ検査を受けられます。
他の病院やクリニックでは眠らない状態で大腸カメラ検査を行うこともあるので、医者としても大腸カメラ検査を患者様に勧めるのは抵抗があると思います。
そのため、大腸カメラ検査を勧めずに、まずは整腸剤で様子を見ましょうということをやりがちですが、これによって重大な病気の発見が遅れることもあります。
そのため、血便が一回でも出てしまったのであれば、一度大腸カメラ検査を受けた方が良いと思います。
一度、大腸カメラ検査を受けるだけでも、数々の重症な病気の可能性を否定できます。
文章 ~医師 中川~