当院でも患者さんからクレームが来たことがあります。
「健診でピロリ陽性と言われ、そこの職員(or医師)には『ピロリの再検査は必要がありません』と言われたのに、ここのクリニックに受診したら『再検査が必要』と言われた」「納得がいかない」と。
この患者さんのお気持ちはよく分かります。与えられた情報の正しさを判断するのは難しい。「儲けのために不要な検査を勧められているのでは?」となりますよね。
しかし、再検査が必要な例が「ほとんど」なのです。
それは日本では多くの人間ドックで「血液検査」によるピロリ菌検査を行っているからです。
一部の健診施設や医療機関では上記のような誤った説明が実際に行われています。そういった説明を受けた患者さんにピロリ菌の再検査の必要性を十分にご理解頂くことが難しい場合があり、きちんとした医療を提供したいと考えるDrは非常に苦労するという場面がよくあります。どうしても納得して頂けず、残念なことにクリニックに対してのクレームの書き込みが生じる事態にすらなっています。
日本ヘリコバクター学会でもこの問題を看過できないと考えているようです。先日下記の緊急メッセージが出されています。
以下がその抜粋です。
血清抗ヘリコバクター・ピロリ抗体検査が診療や検診で広く使用されるようになりましたが、実臨床では血清抗体価の取り扱いについて誤った使用例が多く報告されています。そこで本学会は、この事態を重く受け止め、本学会胃癌リスク評価に資する抗体法適正化委員会にて新たな注意喚起文書を作成いたしましたのでお知らせいたします。
注意喚起文書(添付)は、本学会ウェブサイトにも掲載しておりますので、ご確認ください。また、ご関係の先生方にもご周知くださいますようお願い申し上げます。
血清抗体法を用いたヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染診断に関する注意喚起
http://www.jshr.jp/member/index.html#news210506
※注)一部の先進的なドックでは「便中抗原法」を採用しています。この検査で「陽性」の場合は当院においては除菌前に再検査を行うことはありません。
日々の医療を通して、正しい情報の大切さを再認識させられています。