当院では小児科を標榜していないため、18歳以下の患者様の過敏性腸症候群治療は対応しかねます。誠に恐れ入りますが、ご理解いただけますと幸いです。
【過敏性腸症候群】
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は器質的疾患が存在しないにもかかわらず、腹痛が便秘や下痢と関連して持続する病気です。
器質的疾患とは、がんや潰瘍、炎症などの目にみえる(画像でとらえられる)病気のことをいいます。
「病院では異常がないと言われたけれど、腹痛を繰り返し、便の調子もよくない」
というのが典型的な状態といえます。
また過敏性腸症候群は若年者に多く、年齢を重ねると有病率が低下します。過敏性腸症候群はごくありふれた病気です。
日本の人口の14%前後はIBSだと言われています。また内科に受診する患者さんの31%ほどは過敏性腸症候群だとするデータもあります。
脳と消化管の機能的な関連が、IBSの病態の理解に重要です。
「心理社会的ストレスによって発症する、もしくは悪化する」ことは医師の間では常識です。これは脳から腸へ向かう関係です。
また腸から脳へ向かう関係は「消化管の刺激に対しての内臓知覚過敏」として現れます。
他の人より、お腹の症状を感じやすいわけです。
IBSの患者さんに大腸カメラを行うときに鎮静剤の使用をおすすめするのはこのためです。
また発症には環境因子だけでなく、遺伝的な素因もかかわっていることがわかっています。
二卵性の双子(遺伝子は別)では8.4%が二人ともIBSでしたが、一卵性の双子(遺伝子が同一)では17.2%と、前者くらべてIBSの一致率が有意に高かったとのデータもあります。
また感染性腸炎を契機に、過敏性腸症候群を発症することがあることも知られています。
器質的疾患である感染性腸炎が治って、病原体が体内から消えて、炎症がなくなって、医師からは「よくなりましたね」と言われたけれど、お腹の症状だけが全然取れないという状態です。
喫煙や女性であること、うつ病やパニック発作の既往などがリスクを上昇させると言われています。
IBSの診断
まずは大腸がんなどの腫瘍や、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、感染性腸炎などを除外する必要があります。甲状腺疾患などの便通異常をきたす全身疾患もしっかりチェックすることになります。
血液検査や大腸内視鏡(大腸カメラ)、腹部CT検査などを行うことになります。
過敏性腸症候群の治療
まずは生活習慣を評価し、IBSに悪影響を与えているものがあれば取り除きます。
具体的には偏食や夜食習慣、飲酒、喫煙、睡眠不足、心理社会的ストレスなどです。
薬剤としては、まずはIBSに対しての各種薬剤を使用してみます。効果が不十分な場合は抗うつ剤の使用なども検討することになります。