当院の大腸カメラ検査の特徴のひとつに「腸管洗浄液(下剤)の選択肢の多さ」があります。
大腸カメラと下剤
大腸カメラの「つらさ」は2つあります。
「検査時の痛みや不快感」と「腸管洗浄液(下剤)の内服のつらさ」です。
前者には「技術と鎮静剤」、
後者には「注入法と洗浄液(下剤)の使い分け」が解決策になると考えます。
ここでは当院で採用している腸管洗浄液(下剤)について解説します。
モビプレップ
当院で最も使用する腸管洗浄液です。特徴は「総合力の高さ」です。「洗浄力の高さ」「内服する量が少なめ」「味の良さ」のバランスが最もいいと考えています。
便秘がない方や、便秘でも排便コントロールが良好な方だと、モビプレップの場合は1Lの内服で十分に腸管はきれいになることが多いのです。味は「梅ジュース」に近い印象で飲みやすくなっています。また適度に塩気も感じるため、合間の水分も「口直し」として飲めるでしょうね。
弱点は、高齢者と腎臓の機能が低下している方には使用できないことです。
ピコプレップ
この腸管洗浄液(下剤)の最大の特徴は「内服量の少なさ」でしょう。特筆ものです。腸管洗浄液(下剤)としては「150ml」を2回飲むだけです。他の製品は1-2L以上飲むわけですから、腸管洗浄液(下剤)の内服量は比べ物にならない少なさです。また合わせて飲む「透明な水分」についても自由度が高いです。透明であれば、スープやリンゴジュースや炭酸飲料もOKです。
「味の良さ」も特徴のひとつです。こちらは「オレンジジュース」のような印象ですね。弱点は「洗浄力の弱さ」です。国内第Ⅲ相試験では他の薬剤との「非劣性」は証明されてはいます。しかし実地での使用をしている印象は違います。どうしても「洗浄力がいまいち」なケースがあります。ですので、当院では「頑固な便秘の方」にはおすすめしていません。便秘のない方に主に使用します。便秘をお持ちの場合は事前に入念な便秘治療を行ってから使用しています。
ビジクリア
最大の特徴は「錠剤」であることです。
「錠剤と水(もしくはお茶)の組み合わせならば、なんとか飲める」という、患者さん向けです。2回目以降の大腸内視鏡検査をお考えの方には選択肢に入れてもいいと思います。
1回5錠、200mlの水で飲みます。15分ごとに内服し、合計10回です。合計は2000mlの水とビジクリア50錠となります。「腸管洗浄液の味がどうしても苦手」なかたで、水分を取るのは平気なひとにはぴったりでしょう。弱点は、高齢者と腎臓の機能が低下している方、不安定な狭心症などの心臓に病気がある方には使用ができないことです。
ニフレック
モビプレップが発売されるまでは、多くの施設で使われていました。
特徴は「バランスの良さ」です。「洗浄力」も「味」も含めてです。しかし、モビプレップに比べて「やや洗浄力が低め」で「内服量も多め」です。
もう一つの特徴は「汎用性の高さ」です。
ニフレックは飲んでも体内にはほぼ吸収されないため、電解質への影響はほとんどありません。
ご高齢の方や、腎臓の機能が低下している方にも安心して使用できます。
マグコロールP
他の製品よりも「味がいい」と感じる方がいらっしゃいます。「どうしてもほかの製品は飲めないときのピンチヒッター」として当院では使用しています。
洗浄力がやや弱いため、最初からお飲みいただくことは当院ではありません。
サルプレップ
他の製品よりも「味がいい」と感じる方がいらっしゃいます。「2021年5月、日本製薬株式会社から新しく発売された下剤です。
味はレモン風味(ひとによっては苦みを感じることも)。服用量が他の下剤と比べ、比較的少ないことや、溶解不要でそのまま服用できる手軽さが特徴です。
飲み方としては、サルプレップ1杯+水分2杯を繰り返します。便がきれいになった時点で下剤の服用は終了です。
約半数の人はサルプレップ480mlと水分1,000mlの時点で検査が可能になります。
下剤の種類 | 味 | 服用量 | 洗浄力 |
---|---|---|---|
モビプレップ | やや酸っぱく濃いめの梅味風味 | 洗浄液1,000~2000ml+500ml ~1,000mlの水分 |
◎ |
ピコプレップ | オレンジジュース風味 | 前日:洗浄液150ml+水分1,250ml 当日:洗浄液150ml+水分500ml |
△ |
ビジクリア | 錠剤のため味はしません | 50錠+水分2,000ml | 〇 |
ニフレック | スポーツドリンク系の味 | 洗浄液2,000~4,000mL | 〇 |
マグコロールP | スポーツ飲料風で飲みやすい | 洗浄液1,800~2,400mL | 〇 |
サルプレップ | レモン風味 | 洗浄液480~960mL+1,000~2,000mlの水分 | 〇 |
腸管洗浄液(下剤)には、それぞれに特徴があります。
当院ではさまざまなケースに合わせて腸管洗浄液(下剤)を選択しています。
またご希望があれば、遠慮なく看護師や医師にご相談下さい。
ただし「どんなひとに」「どの腸管洗浄液を選択するのか?」
ここは基本的には医師の判断で決めていきます。
上記の5種類の下剤を状況に合わせて医師がテーラーメイドすることは
「安全・安心」な検査には重要だと考えています。